額装と空間のあいだに

                  

同じデザインのポストカードやポスターであっても額縁を入れ替えるだけで、全く異なる感覚を主役となるデザイン本体から感じ取れることがあります。

額装の不思議さはアート作品そのものの性質そのものを変えてしまう可能性をも秘めているところでもあります。

実際に、有名画家の作品展示会まで足を延ばして額装に感嘆される方はめずらしいかもしれませんが、額装の演出力を知っている目利き人であれば、名画の額装に関心を寄せる気持ちはお分かりいただけるのではないでしょうか。

額装の役割として完全なるアート作品を日常空間に馴染ませる働きに注目している額装デザイナーたちは多いようです。

アート作品には作者の想いとともに、作品が完成されるまでの時間や空間の空気感までもが詰め込まれています。アート作品のもつ異空間的なエネルギーを手にした人の生活空間の中に溶け込むように、両者の空間をつなぎとめているのが額装であるとも専門家たちは語っています。

このような観点から額縁の存在を見始めると、額装とアート作品の間にはとてつもなくお互いが引き寄せられる引力とともに、空間から醸し出される雰囲気そのものが作用する化学反応であるのかもしれないなどと素人ながらに思いを巡らせてしまうのです。

         

           

額縁に入った浮世絵

      

日本独自の美術を代表する版画として世界に知られる「浮世絵」は、当時「江戸絵」「紅絵」「錦絵」などとも呼ばれ、江戸時代の人々の暮らしぶりを伝える貴重な資料としても、現代の数多くのアート作品にも世界的な規模で多大なる影響を与え続けております。

浮世絵は日本だけではなく海外の美術館においても貴重なコレクションとして保存されていることからも、その存在は国際的にも幅広く知られており、世界的に有名な画家として知られるゴッホも浮世絵の美しさに魅せられた画家の一人であり、日本の江戸の町で庶民文化として開花した浮世絵は、西洋人にとってもセンセーショナルなアートとして当時受け入れられたようです。

現代において浮世絵のレプリカなどは、諸外国の人々にも親しまれ、額縁などのフレームに入れる西洋画のようにルームインテリアなどとしてその独特な画風が楽しまれているようです。

江戸時代の庶民文化として花開いた浮世絵は、鎖国下であった江戸の人々によってオリジナリティ溢れるアート作品として世界をかけめぐりました。

その作風は時代を超えても尚、新鮮にも斬新にも映るエネルギーを放っているようにみえます。

現代のようにSNSやネット通信の存在しなかった時代に、小さな島国日本国の都市江戸から世界を席巻するような美術作品が登場し世界を駆け巡った歴史は、これからも人々によって語り継がれることでしょう。