友人は祖母からもらったべっ甲のブローチは、現代ファッションには重たすぎるような気がして手放すことを何度も考えたようなのですが、その度に、いつの日か自分がこのブローチに似つかわしい人物に成長できることを願ってきました。
年齢を重ねるごとに、もしかしたら、このブローチには別の用途があるのかもしれないと自分なりに試行錯誤しておりました。
ある日、夢の中で漆で塗られた額縁が出てきたのですが、友人が祖母の形見として大事にしているべっ甲のブローチを飲み込もうとするのです。
友人は慌てて形見であるブローチを掴もうとしますが、その日の朝は、ベッドの上で一人、手足をバタつかせながら目を覚ますことになりました。友人はこれまでに額縁とブローチの共存は考えたこともありませんでした。
そう言えば漆塗りであったかは忘れてしまいましたが、友人の姉が祖母の形見として、額縁を好んでいくつか持ち帰っていたことを思い出したそうです。
ブローチを額縁に飾る発想を想い描いたのは初めてでしたが、友人はクローゼットの奥にしまい込んでいるブローチを哀れんだ祖母が生前大好きだったべっ甲のブローチを楽しむための新たな提案をしてきたような気がしてなりません。
さっそく週末にでも姉の自宅に押し掛けてみようと考えているとそう笑って話してくれました。